[Institute for Research in Humanities. Kyoto University]
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2002年度 京都大学人文科学研究所 夏期公開講座 聴講無料


テーマ  生活の中の植民地主義

講師と演題;

7月5日(金)午後1時ー4時

 水野直樹 (所員)      朝鮮人の名前と植民地支配
 鄭 根埴 (韓国・全南大)  植民地支配・身体規律・健康

7月6日(土)午後1時ー4時

 駒込 武 (本学教育学部)  植民地における神社参拝
 松田吉郎 (兵庫教育大)   台湾先住民と日本語教育―阿里山ツオウ族の戦前・戦後―

場所;

  606-8501 京都市左京区吉田牛の宮町 2階本館大会議室
  バス停:京大正門前 電話:075-753-6902(庶務掛)


講 演 要 旨


朝鮮人の名前と植民地支配(水野直樹)

 日本の植民地となった朝鮮では、日本式の戸籍制度が整えられたが、それに登録される朝鮮人 の名前に対して日本当局(朝鮮総督府)がどのような政策をとったかを検討する。1940年に実施 された「創氏改名」は今もよく知られているが、1910年代の支配初期には、女性の名づけの義務 化、朝鮮語固有語彙による名前や幼名の禁止、そして「日本人風の姓名」の禁止などの措置がと られたことは、ほとんど知られていない。これらの問題を明らかにした上で、「創氏改名」にい たる日本側の政策を考察することを通じて、名前と植民地支配との関係を考える。

植民地支配・身体規律・健康(鄭 根埴)

 日本の植民地支配権力は、朝鮮人の身体を管理し統制することに力を注いだ。それはハンセン 病患者の「患者心得」「身体作法」などに典型的に表われているが、戦時期になると兵士動員、 労働力動員を目的として学校教育などを通じての身体規律の強化がなされることになった。身体 の等級化・規律化、そして集団的「練成」が日常生活の中で大きな位置を占めた。日本「内地」 と同様に植民地朝鮮でも、総動員体制の下で「健民」「健母」「健児」が称揚された。このよう に強化された身体の規律化が植民地民衆の身体・精神にどのような刻印を残したか、そして解放 後(戦後)の南北朝鮮の政治・社会にいかなる影響を及ぼしたか、を考える。(講演は日本語で 行ないます)

植民地における神社参拝(駒込 武)

 元旦などの祭日における神社参拝を生活に根付いた習慣として受け入れている日本人は少なく ない。しかし、日本の植民地支配下で生活した多くの台湾人や朝鮮人にとって、神社に祀られた 神々は疎遠な存在だった。だからこそ、日本当局は、1930年代に台湾人や朝鮮人のクリスチャン に、「忠良なる国民」であることのあかしとして神社参拝を強要した。あたかも「踏み絵」を踏 ませるかのようなその歴史は、「初詣」のおめでたい風景とは対照的な性格を持っている。その 歴史をかえりみることを通じて、「思想・信仰・良心の自由」の意味を改めて考えてみたい。

台湾先住民と日本語教育 ―阿里山ツオウ族の戦前・戦後― (松田吉郎)

 台湾総督府は台湾において学校教育を通じて日本語普及政策を行なったが、台湾先住民に対して は巡査が教育所において日本語教育を行なった。先住民は日本語を学び、新たな知識を得て、上級 学校に進学したり、「高砂族義勇隊」として南方戦線に赴くこととなった。彼等は村の中堅的指導 者の地位を占めた。その中堅的指導者が戦後の国民党支配に反抗して2・28事件(1947年) に参加し、その多くが処刑された。このような台湾先住民の指導者層が歩んだ戦前・戦後の歴史を 阿里山ツオウ族の事例から考察する。