TF入力方式によるサンスクリット・多言語用 LaTeX --- Windows へのインストールと使用の方法 --- 藤井 正人 2004.12.23 2005.09.14 本パッケージ win-sktset は、筆者が日常 Unix 環境 (Linux) で行なっている TF方 式による LaTeX2e および BiBTeX の入力と処理を、Windows XP 上で行なうための方 法をまとめたものです。Windows 98 および Me でも、ほぼ同じ方法でインストール と使用ができます。このパッケージは、自由に使用あるいはコピーしていただいて結 構ですが、その中に含まれるシェアウェアに関しては、各人の責任で正しくお使いく ださい。 ------------------------------------------------------------------ A. インストールの方法 1. Windows用の LaTeX2e と dviout をインストールする。 奥村晴彦『[改訂第3版] LaTeX2e 美文書作成入門』(技術評論社)付録の CD-ROM からインストールする場合は、CD に含まれる TeX用エディタ「WinShell」 は、使わないのでインストールしなくてよい。インストールの方法は、同書 319-322 ページ参照。 2. パッケージ win-sktset 全体を、例えば、C:\ にコピーする。 win-sktset は以下のものから成っている: ファイル win-sktset-manual.txt --- 当パッケージのインストールの方法と使用法 (本文書、同じものが work\manuals にも入っている) wfd105b.exe --- WinFD : Windows用 FD (シェアウェア) (コマンド入力ができるファイルマネージャ) lhaca120.exe --- +Lhaca : 解凍・圧縮ツール hm414.exe --- hidemaru : 秀丸エディタ 4.14 (シェアウェア) sinst1-4-7-0.exe --- sakura : サクラエディタ 1.4.7.0 qkc192.zip --- qkc : 漢字・改行コード変換ツール sed242.lzh --- sed : テキスト置換ツール cgrep301.lzh --- cgrep : 日本語の通る grep である cgrep (Ver. 3.01) の Win32 移植版 tipa-1.3.tar.gz --- TIPA : 福井玲氏が開発したLaTeX用 IPA(国際音声記 号)フォントおよびマクロのパッケージ multilang.tgz --- 嶋田隆司『LaTeX2e アドバンスドガイド』付属 CD-ROM 所収の多言語対応の METAFONT ソース ディレクトリ(フォルダ) bat --- LaTeX 一括処理のためのバッチファイル mytex --- Sanskritおよび多言語用等の LaTeX 追加ファイル sed --- sed ファイル(tf 方式の変換表など) work\bibfiles --- BiBTeX ファイルのサンプル manuals --- 各種マニュアル TF方式の入力法 (tf.dvi, tf.pdf) samples --- LaTeX2e ファイルのサンプル writing --- ユーザの文書作成領域 (どこでもよいが、この下にまとめると便利) 3. ツールのインストール 1) ディレクトリ c:\tools\WinFD を作る。 2) マイコンピュータまたはエクスプローラで、 win-sktset の wfd105d.exe をクリックして展開する (展開先を C:\tools\WinFD にする)。 WinFD のショートカットを ([スタート] -> [すべてのプログラム] -> [WinFD] を選んで、右クリックで) 作成して、ドラッグしてデスクトップへ置く。 3) lhaca120.exe をクリックして展開する。 lhaca120.exe を展開してできたデスクトップ上の +Lhaca をクリックして、 解凍先を「解凍のたびに指定」に設定しておく。 4) 「メモ帳」以外にエディタがインストールされていなければ、秀丸 hm414.exe あるいは サクラエディタ sinst1-4-7-0.exe をインストールする (クリックす るだけでインストールが始まる)。 5) win-sktset 所収のツール類 qkc192.zip、sed242.lzh、cgrep301.lzh をドラッ グして、デスクトップ上の +Lhaca にかぶせて解凍する (解凍先を c:\tools に指定して)。 5) 解凍してできた c:\tools の中の3つのディレクトリ qkc192、sed242、 cgrep301 から、qkc.exe、sed.exe、cgrep.exe を c:\tools にコピーする。 4. TF関係ファイルの追加 1) win-sktset の mytex デレクトリ全体を、 platex のディレクトリ c:\usr\local\share\texmf\ptex\platex の下へコピーする。 2) win-sktset の bat と sed のディレクトリを、c:\ にコピーする。 5. 環境変数 PATH の追加 Windows XP では、 [スタート] --> [コントロールパネル] --> [パフォーマンスとメンテナンス] --> [システム] --> [詳細設定] --> [環境変数] を開け、 「ユーザ環境変数」または「システム環境変数」の PATH に、;c:\dviout;c:\tools;c:\bat を書き加える。 Windows Me では、 [スタート] --> [ファイル名を指定して実行] で、msconfig と入力して、 [システム設定ユーティリティ] --> [環境] を開け、 PATH に、;c:\dviout;c:\tools;c:\bat を書き加える。 Windows 98 では、 AUTOEXEC.BAT をエディタで開き、次のように書き加える: set PATH= ......;c:\dviout;c:\tools;c:\bat ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ 6. work ディレクトリのコピー ホームディレクトリ c:\home を作り、そこに skt-set の work をコピーする。 7. WinFD を起動させて、h を押して shell の窓に、またはコマンドプロンプト c:\> に、mktexlsr と入力して、TeXデータベースファイル (texmf/ls-R) を更新 する。 以上で、TF方式の LaTeX の使用が可能となる。再起動は不要。(使用法は下記) * * * 以下は、ギリシャ文字、ロシア文字、国際音声記号を表記するための追加ファイ ルのインストールである。簡単なので、ここで続けてインストールしておくこと をすすめる。 8. ギリシャ文字、ロシア文字用の基本ファイルは、skt-set の mytex の中に含まれ ているので、上の作業ですでにインストールされている。 それらの文字の使用には METAFONT ソースが必要なので、 skt-set の multilang.tgz を +Lhaca へドラッグして、 c:\usr\local\share\texmf\fonts\source の中に解凍する。 9. TIPA (TeX 国際音声記号) のインストール 1) skt-set の tipa-1.3.tar.gz を +Lhaca へドラッグして、ディレクトリ c:\set の中に解凍する。 2) ディレクトリ c:\usr\local\share\texmf\tex\latex\tipa を作り、 その中に c:\set\tipa-1.3.tar\tipa-1.3\sty にある全ファイルをコピーする。 3) ディレクトリ c:\usr\local\share\texmf\fonts\source\fkr\tipa を作り、 その中に c:\set\tipa-1.3.tar\tipa-1.3\mf にある全ファイルをコピーする。 4) ディレクトリ c:\usr\local\share\texmf\fonts\tfm\fkr\tipa を作り、 その中に c:\set\tipa-1.3.tar\tipa-1.3\tfm\ にある全ファイルをコピーする。 6) c:\set\tipa-1.3.tar\tipa-1.3\dvips\tipa.map を c:\usr\local\share\texmf\dvips\config にコピーする。 7) ディレクトリ c:\usr\local\share\texmf\fonts\type1\fkr\tipa を作り、 その中に c:\set\tipa-1.3.tar\tipa-1.3\type1 にある全ファイルをコピーす る。 8) c:\usr\local\share\texmf\dvips\config\config.ps と c:\usr\local\share\texmf\dvips\config\config.pdf に 次の1行を書き加える: p +tipa.map 9) WinFD で h を押して shell の窓に、またはコマンドプロンプト c:\> に mktexlsr と入力して、TeXデータベースファイル (texmf/ls-R) を更新す る。 以上でインストール終了。再起動不要。問題なくインストールできたかを確認する には、例えば、c:\home\work\manuals\tipa-kdgr-cyr.tf をコンパイルする(TF 方式のコンパイルのしかたについては下記)。 --------------------------------------------------------------------------- B. 使用法 WinFD を使うと、処理が容易である。 あらかじめ WinFD の設定を行なう。 WinFD を起動させて、s を押して、ソート条件を「名前」、順番を「昇り順」に する。 次に、[設定] -> [設定(E)] で設定画面を出し、左の設定項目から「機能」を選 ぶ。右下の「ホームディレクトリ」に「C:\home\work」と入力し、「起動時はホー ムディレクトリから」にチェックを入れる。 さらに設定項目から「プログラム」を選び、「テキストエディタ」の欄に「参照」 を使ってエディタの場所を指定する。例えば、秀丸ならば、 C:\Program Files\Hidemaru.exe\Hidemaru.exe その他、「表示色」で背景の色などを変えることができる。 表示文字コードの切り替えは、以下のようにする: WinFD 画面で、表示したいファイル名にカーソルを合わせて、Enter を押し、 内容を表示した後(最初は SJIS 表示)、l (エル) を押して、 SJIS --> JIS --> EUC --> SJIS --> ... と切り替える。 1. LaTeX の 入力 (TF方式) TF方式の入力では、作成するテキストにはすべて拡張子 .tf をつける。 以前は、拡張子 .org を用いていたが、プログラム・ファイルとの混同をさけ るために .tf に変更。以前の .org ファイルは、下記のコンパイル時に、自動 的にファイル名が .tf に変更されるので、そのままで利用できる。 Windows-DOS版の sed と qkc には、処理するファイル名に拡張子を除いて8文 字以下の制限があるが、当パッケージでは skt.bat で制限を回避しているので、 ファイル名に字数制限はない。 入力・編集は、すべて、この tf ファイルで行ない、コンパイルの時にできる tex ファイルには、けっして手を加えてはいけない。コンパイルごとに上書きさ れて消えてしまう。 Sanskrit の特殊文字を表わすためのパッケージを使うために、 tfファイルのプリアンブル (\begin{document} よりも前の部分)に、 \input{vs2tex} を書き加える。それ以外に常時、加えておくと便利なパッケージについては、 LaTeX2e のサンプルファイル (c:\home\work\manuals\latex2e.tf) 参照。 新たにファイルを作成するときは、このサンプルファイルを別名で コピーすると便利である。WinFD 上で h を押し、shell の窓を開けて、 copy latex2e.tf xxxx.tf と入力して、 OK または Enter を押す。xxxx.tf にカーソルを合わせて e を押 して、エディタでファイルを開くか、x を押して外部プログラム用の窓を開けて、 エディタ名をファイル名の前に入れて、ファイルを開く。 <参考: LaTeX2e と 旧LaTeX の文書の書き方の基本的な違い> LaTeX2e \documentclass[11pt,a4j]{jarticle} 旧LaTeX \documentstyle[11pt,a4j]{jarticle} LaTeX2e \textrm{.....} TF では \rm{.....} も可 \textit{.....} 補正(\/)不要 TF では \it{.....} も可 \textbf{.....} TF では \bf{.....} も可 \textsc{.....} TF では \sc{.....} も可 \texttt{.....} TF では \tt{.....} も可 旧LaTeX {\rm .....} {\it .....\/} {\bf .....} {\sc .....} {\tt .....} イタリックのボールド LaTeX2e \textit{\textbf{.....}} TF では \it{{\bf.....}} も可 旧LaTeX 不可能 {\small .....}, {\large .....} などは、LaTeX2e と 旧LaTeX で同じ。 LaTeX2e の詳細については、奥村晴彦『[改訂第3版] LaTeX2e 美文書作成 入門』(技術評論社)などを参照すること。 2. LaTeX のコンパイル LaTeX の入力ファイル名が xxxx.tf として、コンパイルするには、 WinFD 上で h を押し、shell の窓を開けて、そこに skt xxxx <-- .tf を除く と入力して、OK または Enter を押す。skt.bat がかかり、まず tf ファイルが tex ファイルに変換され、そののち platex のコンパイルが行なわれる。Unix で 作成したファイルも、skt.bat で一時的に漢字・改行コードが変更されるので、 そのままでコンパイルできる。 コンパイルによって生成された dvi ファイルを画面で見るには、WinFD の shell 窓で、 dviout xxxx <-- .dvi は付けても付けなくてもよい と打つか、WinFD 上の xxxx.dvi をクリックする。dviout から印刷ができる。 dviファイルから pdfファイルを生成するには、WinFD 上で h を押し、shell の 窓を開けて、次のように入力する。 dvipdfmx xxxx.dvi <-- .dvi が必要 生成された xxxx.pdf を WinFD 上でクリックすると、Acrobat Reader で表示・ 印刷できる。 ------------------------------------------------------------------------ <国際音声記号・ギリシャ文字・ロシア文字の表記法> 上記のインストールをすべて行なうと、国際音声記号・ギリシャ文字・ロシア文字が 表記できる。 表記法の詳細は以下の専用マニュアルを参照: work/manuals/tipa-lgr-cyr.dvi tipa-lgy-cyr.pdf ------------------------------------------------------------------------- <TF方式による BibTeX の使用法> 1. 文献データの入力 BibTeX 用の文献入力ファイル (bibfile) は、文書ごとに分けて作成するのでは なく、すべての文書に対して共通のファイルを用いる方が便利である。共通の文 献入力ファイルは、文献データベースとしても利用できる。参考に、 work\bibfiles に筆者の bibfile である fjbib をサンプルとして載せた。 TF入力方式の BibTeX では、処理はバッチファイル c:\bat\sktbib.bat によって 行なわれる。sktbib.bat には、実際の文献入力ファイルの名前と場所を書き込む 必要があるので、利用状況に応じて、以下のように sktbib.bat を修正する。 文献入力ファイル名は何でもよいが、他のファイルと区別するために、最後の3 文字を bib とする (拡張子の .bib ではない!)。ただし、sed および qkc の字 数制限から、ファイル名を8文字以下にすること。また、Unix で作成したファイ ルも、sktbib.bat で一時的に漢字・改行コードを変更するので、そのままで利用 できる。 例えば、So-and-soさんの文献入力ファイルの名前を ssbib とし、そのファイル を c:\home\work\bibfiles\ に置くとすると、sktbib.bat を次のように修正する: qkc /m /s c:\home\work\bibfiles\ssbib > c:\home\work\bibfiles\ssbib.d sed -f c:\sed\bib.sed c:\home\work\bibfiles\ssbib.d > c:\usr\local\share\ texmf\jbibtex\bib\ss.bib del c:\home\work\bibfiles\ssbib.d jbibtex %1 文献入力ファイルの入力のしかたは、次の例外を除いて、tf方式と同じ。 "A "I "U "E "O を {"A} {"I} {"U} {"E} {"O} と入力する。 入力後、そのつど以下のように printbib のコンパイルをして正しく入力した かどうかをチェックしておくとよい。WinFDで c:\...\bibfiles\print に入り、 printbib にカーソルを合わせて h を押して shell窓を開けて、以下のようコン パイルする: sktbib printbib skt printbib (↑キーで補完) (sktbib の処理内容) sktbib によって、sktbib.bat がかかり、 TF方式の c:\home\work\bibfiles\ssbib が、 TEX方式の c:\usr\local\share\texmf\jbibtex\bib\ss.bib に変換され、そのあと ss.bib が bibファイルとして処理される。 2. 個々の文書での BibTeX の使用法 文書 (xxxx.tf) の末尾の \end{document} の前に、次の2文を添える: \bibliographystyle{jplain} \bibliography{ss} <---- 入力 bibファイルが ssbib のとき \bibliography{ss} は、文献表を打ち出す命令なので、文献表の文字を小さくし たいときには、例えば、 {\small \bibliography{ss} } とする。 以下のようにコンパイルすると、自動的に文献表が作られる: skt xxx sktbib xxxx (↑キーで補完がきくので skt に bib を添えるだけ) skt xxxx (↑キーで補完) skt xxxx (↑キーで補完) ---------------------------------------------------------------------------