―今月の写真―
女神が町にやってきた!
〜イギリス・グラストンベリー〜
写真・文章 河西瑛里子* 
グラストンベリー女神カンファレンス。それは、女神好きな人々が集まる楽しいお祭り。一週間にわたって、レクチャー、ワークショップ、仮装パーティなどが催され、思いっきり女神を楽しむイベントなのだ! 

2006年 夏。 イギリス グラストンベリー、またの名を「魔法の島アヴァロン」。

町の中心にあるタウン・ホール前。先ほどから、カラフルな衣装を身にまとった人々が続々と集まってきています。ドラムやマラカスを鳴らしている人もいて、そこはお祭りモード全開のにぎやかさ!

と、誰かが歌い始めます。

♪ 空気、火、水、大地の母よ。祖母、処女の母、出産の母よ。あなたに祝福を、私に祝福を。母よ、私たちみんなにとっての偉大な母よ。

あっという間に、その場にいた人々みんなが歌いだし、辺り一帯に歌声が響き渡ります。バス停でバスを待っている人々も、カフェでお茶を飲んでいる人々も、通りかかりの人々も、それぞれの手を休めて、こちらを見ています。

今日はカンファレンスの最終日。みんなで町外れにある丘、グラストンベリー・トールまで行進します。

行列が動き出しましたよ。

交通規制がなくたって、横一列になって、堂々と車道を歩きます。写真も撮り合いっこしようよ。大人だけでなく、子供だって歩きます。女だけでなく、男だって歩きます。私たちはみんな、女神を愛するメガミスト。

カラフルな衣装。カラフルなのぼり。力強い歌声とにぎやかなドラムの音。悠々と行進していく人々とそれを追いかけていく報道陣。沿道の人の目は、この奇妙な行列に釘付け。

ゆるやかな坂道をのぼりきったら、あとはトールをのぼるだけ。ここからは、そろそろ子供たちの出番かな。疲れてきた大人たちをどんどん追い越して、元気に丘をのぼっていきます。




子供たちにとっての強敵は、ばさばさと吹きつけてくる風。
のぼりを握り締める手に一段と力が入ります。吹き飛ばされて、たまるか〜。
トールのてっぺんにそびえたつ、聖マイケル塔が、そんなみんなを見守っています。
ここからの風景は、眼下に広がる見渡す限りの大平原。畑があって、町があって、またその向こうに畑があって、その果てには地平線。足元では、羊がのんびりお食事中。

と、下のほうから、きれいな歌声が聞こえてきましたよ。
♪ ああ、アヴァロンの女神よ。 ああ、アヴァロンの女神よ。
あなたの創りだしたものは、すばらしい。 ああ、アヴァロンの女神よ。
へとへとになりながら、風に吹き飛ばされそうになりながら、それでも女神への歌を歌い続ける。先ほどまで疲れた顔をしていたのに、どこからそんなエネルギーが湧いてくるの、メガミストさん?

 「トールをのぼるにつれて、エネルギーがアップするのよ」 


トールは古代女神信仰の聖地ともいわれ、 メガミストにとっても、特別な場所です。
グラストンベリーはアヴァロン。アヴァロンはケルト神話に出てくる、死者が復活のときを待つ魔法の島。

この地では、現実の世界グラストンベリーと、神秘の世界アヴァロンが重なり合っていて、トールのてっぺんに立つ聖マイケル塔こそが、2つの世界をつなぐ扉といわれています。

古代の女神信仰の聖地 
ケルト人の信仰ドルイド教の中心地 
イングランドのキリスト教の発祥地
中世のキリスト教の巡礼地
レイラインの交差地点
UFOの目撃情報数知れず     etc…

こんなにいろいろな角度から特別な場所とみなされるグラストンベリー。その秘密は、スピリチュアルな人々をひきつけるふしぎなエネルギーであり、そしてその源は、このグラストンベリー・トールにあるともいわれます。だから、トールをのぼると元気になれる!というのは、ある意味、筋が通っているのです。

女神の歌が鳴り止まない中、ますますパワフルになって、塔を目指して進むメガミストたち。
そんなみんなに、女神のご加護がありますように! 
* 博士後期課程/日本学術振興会 特別研究員 

※メガミスト:女神運動への参加者は、英語で“goddess”と呼ばれています。「メガミスト」とはその訳語ですが、私の造語で、正式な学術用語ではありません。

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