ミクロ人類学の基礎的研究
(正式名称『個をめぐるミクロ人類学確立に向けての基礎的研究 対象・研究者・パラダイムの連関的考察』科学研究費基盤研究B)
代表 田中雅一
本研究の目的は、対象・研究者・パラダイム(理論的枠組み)の3領域について、各領域の問題を明らかにし、また各領域を有機的に関連づけることで、ミクロ人類学の確立のための基礎的研究を進めることである。人類学は、社会や集団・民族を対象単位とし、ミクロな次元を扱うのに有効な方法を発達させてこなかった。事例研究を通してミクロ人類学が何を対象(主題化)とし、いかに分析するのかを(方法論)探究する。その際、とくに着目するのは当該社会のヒト観、セルフ、ジェンダー、セクシュアリティに関わるアイデンティティ、感情表現や身体論などである。また、パーソンやセルフ、エージェントなど個をめぐる諸概念に明確な定義がなされないまま利用されてきた。また調査方法や周辺諸科学との関係も曖昧なままである。これらの問題を整理し、解決を試みる。本研究は1998年3月まで実施された人文研での研究班『主体・自己・情動構築における文化的特質』を継承するものである。当面、この研究班の前身である『主体・自己・情動構築班の成果公刊の作業が続きます。
研究分担者・研究協力者
学内
李仁子(民博COE)金谷美和(学振・特別研究員)小牧幸代(人文研)菅原和孝
(総合人間)速見洋子(アジア・アフリカ地域研究科)田辺明生(アジア・アフリカ
地域研究科)常田夕美子(学振・特別研究員)中谷純江(学振・特別研究員)
保坂実千代(アジア・アフリカ地域研究科)松田素二(文学部)
学外
青木恵理子(鈴鹿国際大)内山田康(FASID)窪田幸子(広島大) 栗本英世(民博)
冨山一郎(阪大)中谷文美(岡山大)中谷哲弥(奈良商科大)林勲男(民博)福浦厚子
(滋賀大)渡辺公三(立命館大)
例会の記録
1997年度
第1回 06/29
- 田中雅一(京大人文研)
「これまでの経過と今後の方針、ミクロ人類学の位置づけ」
- 松田素二(京大文学部)
「創造的主体の可能性」
第2回 09/28
- 青木恵理子(鈴鹿国際大)
「頭痛治しは蝋燭を灯して〜東インドネシア・ フロレス島の身体と信仰」
- 中谷 文美(岡山大)
「異議申し立てとしての非婚」
第3回 10/26
- 内山田康(国際開発機構高等教育センター)
「Soil, Self, Resistance: late-modernity and lacative spirit possession
in Kerala.」
- 常田夕美子(京大人文研)
「初潮儀礼と女の政治学:インド・オリッサにおける女性の主体性とエージェンシーをめぐって」
第4回 11/16
「植民地主義と人類学研究班」と合同研究会
- 高媛(東京大学大学院人文社会研究科)
「日露戦争以降における日本人の『満州』観光」
- 米山リサ(京大文学部)
「植民地ディアスポラと批判的多文化主義の実践:家族・人種・セクシュアリティーと柳美里の「揺れ」」
第5回 11/30
- 速水洋子(京大アジア・アフリカ地域研究科)
「越境の体験と決断の時:はざまにおける主体形成」
- 福浦厚子(滋賀大)
「シンガポールの家庭内祭祀:邪術師と霊媒と」
第6回 12/14
- 窪田 幸子(広島大)
「神話・土地・クラン:ヨロンゴ女性の語りの変化をめぐって」
- 藤原久仁子(お茶の水女子大学大学院)
「経験と主体形成:マリア幻視者の語りに見られる身体表象の変容過程」
第7回 1/25
- 菅原和孝
「喪失の経験、境界の語り:グイ・ブッシュマンにおける死の言説をめぐって」
- 田中雅一
「スリランカ地曳網漁の歴史と抵抗:political economyとshifting agencyをめぐって」
第8回 3/4
- 小林香代(学術振興会特別研究員)
「東京エイサーシンカの1996年8月15日」
- 足立明(北海道大学文学部)
「開発現象における『貧困』概念」
- 渡辺公三
「可付番集合としての人間:数列化される個体」
*成果刊行の論文締切が近づいてきました。
1998年度
特別合同部会
- 99/10/18合評会栗本・井野瀬編『植民地経験ーー人類学と歴史学からのアプローチ』(人文書院)コメンテータ/秋田茂(大阪外大)・伊地知紀子・窪田幸子・清水昭俊(民博)・和崎春日(名古屋大)
99/12/1赤川学(岡山大学)「『セクシュアリティの歴史社会学』を書き終えて」
第9回 12/13
- 保坂実千代
「一夫多妻社会における女たちのソシアビリテ:マリ共和国
バンバラ社会の事例」
- 崎山政毅(神戸市外大)
「<個別化の技法>と<抵抗>の位相」
第10回 1/24
- 菅原和孝「グイ・ブッシュマンの<感情の回路>再考ーー<感情の人類学>へ向けての一試論」
第11回 3/29
- 佐藤知久(京都大人環院)「支援と援助の論理を越えて〜ブルックリンのHIV感染者サポートグループについて」
- 松田素二「Selfの人類学に向けて――個的主体の可能性」
1999年度
第12回 6/26
- 川村清志 「祭りを巡る身体〜差異と模倣の実践コァ」
- 太田好信(九州大学)「フランツ・ボアズーー移民の視点から人類学をつくる」
フランツ・ボアズがアメリカ人類学の特徴を決定づけたという評価(G.ストッキングがどのような歴史の相互作用のなかで形成されたのであろうか。ボアズについては、文化相対主義を唱えた人類学者、黒人文化運動へコミットしたリベラル知識人、北西海岸での言語・フォークロアの調査者、そして多くの優れた弟子を育てたコロンビア大学教授という様々な断片的イメージが先行している。だが、いまだにボアズの試みたプロジェクトは未完であると私は考えている。ボアズが心に描いた人類学のヴィジョンとは何であったのか。アメリカ合州国において第二次大戦後、ボアズの弟子たちにより展開していった人類学とはどこが違うのであろうか。これらの一連の疑問について考察したい。
第13回 6/28
- Timothy Tsu For Science, Co-Prosperity, and (May be) Love: Japan's
Greater East Asian War and the Re-Imagination of Taiwanese Folklore
第14回 7/5
- Brian McVeigh (東洋学園)Sexualized ‘Cuteness’ in Japanese Popular
Culture
第15回 12/11
- 田中雅一「在日米軍の宗教生活――チャプレンと陸軍創設記念日舞踏会
の分析」
- John Knight Human Ambivalence towards Animals in Japan:
People-Wildlife relations on the Kii Peninsula.
The topic will be people-wildlife relations on the Kii Peninsula:
(i) onthe one hand, the view of wild animals such as wild boar,
monkeys,deer and bears as pests; and (ii) on the other hand,
affection towardsand idealizations of these animals as `cute・childlike
figures.The analytical focus will be on these contrasting views
of animals(doubutsukan) within a Japanese region.
第16回 12/18
- 山口恵理子「乳房という出来事:ギリシャのタマをめぐって」
第17回 1/22
第18回 2/26
- 川村清志「故郷と<民俗>、その表象と実践−−近/現代日本における」
第19回 3/12
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