シンポジウム
南アジアの聖地をめぐるポエティクス/ポリティクス/ポップ

期日 2000年12月7日(木)〜8日(金)
場所 コープイン京都会議室

趣旨:アヨーディヤの例をあげるまでもなく、現代南アジアが直面する政治状況を理
解するうえで聖地をめぐる諸問題を無視するわけにはいかない。本シンポジウムで
は、従来の、コスモロジーとの関係を強調する象徴論に基づく南アジアの聖地論を批
判的に継承しつつ、聖地の三つの側面を考察する。これらを本シンポではポリティク
ス、ポエティクス、ポップと呼ぶ。第一のポリティクスは、聖地の発展に大きな影響
を与えた政治・経済的な側面である。歴史的アプローチをとることで、聖地に作用し
ている権力関係を分析する。当然政教分離の問題にも関わる。しかし、聖地を政治・
経済的要因に還元すべきではない。聖地はなによりも民衆の信仰対象であり、想像的
世界の拠点である。この事実を無視すべきではない。この聖地の狭い意味での宗教的
性格(ポエティクス)が第二の側面である。第三に、現代南アジアでは聖地にかぎら
ず宗教がメディアや観光化の影響でより流動的になり、宗教(宗派)横断的な信仰の
あり方が認められる。これは従来指摘されてきたシンクレティズムや現世利益的な信
仰と異なるのかどうか。本シンポでは、これを聖地のポップ化と名付ける。これら三
つの領域についておのおののセッションで集中的に議論する。最後のセッションではパブリック・スペースとしての聖地を論じる。(文責 田中雅一)
 

12月7日(木)
900-田中雅一「問題提起」
<第一セッション:ポエティクス> 司会/小磯千尋 コメンテータ/常田夕美子
930-坂田貞二「16世紀のヒンディー文学における聖地:トゥルスィーダースの
『ラーム・チャリト・マーナス(ラーマ王子行伝)』の場合」
1030-小牧幸代「インド・パキスタンのムスリム社会における聖者・聖遺物・聖地」
1130-討論 
1230-昼食
<第二セッション:ポリティクス> 司会/田辺明生 コメンテータ/志賀美和子
1330-田中雅一「ヒンドゥー寺院と法的管理:南インド・チダンバラム・ナタラー
ジャ寺院をめぐって(1850-1980)」
1430-小磯千尋「聖地パンダルプール:その聖性と俗性」
1530-休憩
1600-杉本星子「タミルナードゥ州コング地方の寺と市」
1700-1800 討論 

1830-懇親会

12月8日(金)
<第三セッション:ポップ> 司会/坂田貞二 コメンテータ/杉本良男
900-古賀万由里「ケーララ州北部における儀礼と政治」
1000-中谷哲弥「聖地と観光の関係を考える:ベンガルの聖人チャイタニヤの生地再
発見とマヤプルの発展をめぐって」
1100-三尾稔「宗教空間の形成とアイデンティティー・ポリティクス:ラージャス
ターン州メーワール地方のスーフィ聖者廟コンプレックスの事例分析」
1200-討論
1300-昼食
<第四セッション:パブリック・スペース> 司会/三尾稔 コメンテータ/石田久
美子
1400-池亀彩「変貌するパブリック・スペース:間接統治下マイソールの王宮・寺院
・国家」
1500-討論

<総合討論>
1600-1730総合司会/杉本良男・田中雅一