2.「人種」—社会的構築物か生物学的リアリティか |
ローリング・ブレイス(ミシガン大学) |
長い年月にわたって淘汰され、形成された人類の生物学的特徴は、 その淘汰力の勾配に従って分布している。各々の淘汰力は、それぞれ異なった勾配を持ち、集団や地域の境界線
(実際には境界線そのものは存在しないが)に拘束されておらず、それらを超えて存在している。 地域的な人間集団を出発点として、生物学的特徴の研究分析の為に使用しても、意義のある理解を得る
ことはできない。人類の生物学的な本質は、各々の適応特質(adaptive traits)を独立的に研究する ことによってのみ得られるものであろう。肌の
色、歯の大きさ、「ヘモグロビンの構造異常」、血液型などの形質は、クラ イン(勾配)に従って分布していて、これらは互いに完全に無関係である。 また、適応特質の一つである「知性」、血液凝固能力や、他の生理学的多態
性はどの人間にとっても対等に重要であって、ある人間集団が、他の集団と は違うという予想は全く正当化されない。ある地域でクラスター(類似した 集団)を形成する形質は単に血縁関係を表しているだけである。それは「家
族の類似関係を拡大したもの」であり、他に生物学的な重要性はない。例え ば、頭骸骨の形、眼窩の形、頬骨の形などには適応形質としての意義はな い。「人種」の概念は人類の生物学的多様性の研究から出てくるものではな
く、むしろ人間生物学の多様性を理解するのを妨げるだけのものである。 |
<プロフィール> チャールズ・ローリング・ブレイス ミシガン大学人類学部教授/同人類学博物館生物人類学主任 私の40年来の主な研究テーマは、人類進化の過程を検証し、観察される変化が起 こった理由を探究することである。特に、現代型人類の形態が、どのようにして、な ぜ、それ以前の古代型人類から出現したのかについて興味をもっている。 主要著書: The Stages of Human Evolution, 5th edition (Prentice-Hall, 1995); Evolution in an Anthropological View (AltaMira Press, 2000); Race is a Four- Letter Word: America and the Genesis of the Concept of Race (印刷中). |