ポルノグラフィー研究会


「ポルノグラフィー研究会」趣旨説明

「ポルノグラフィー研究――エロスとその表象をめぐって」というタイトルで共同研究を開催します。文学、絵画、写真、映画、ビデオなど、さまざまな媒体をつかったエロスの表象の分析をつうじて、エロスの本質とその表象可能性や、それらの表象を横断する〈主体〉、〈個人〉、〈国家〉、〈民族〉、〈性差〉、〈宗教〉、〈モラル〉、〈死生観〉などの問題を考えるというのが主要なテーマです。非常に広いテーマですが、はじめはできるだけ実験的、冒険的であることをめざし、研究会の進展をみて、より具体的ないくつかのテーマに絞りたいと考えています。

今のところ期間は3年間、原則として月2回(隔週水曜日)の集まりを予定しています。核になる20名程度のメンバーのほか、在野の研究家、収集家、アーティストなど、多彩な人々をゲストとして招きたいと考えています(文責大浦)。

連絡先は右記へ:大浦康介(代表)田中雅一(事務局)


原則として毎月第一水曜(読書会)と第三水曜(発表)の集まりとなります。

班員 (院生・非常勤講師はこの名簿には掲載していません)
所内 大浦康介 金文京 北垣徹 田中雅一 東郷俊宏
学外 小西嘉幸 (大阪市大・文)小山俊輔(奈良女・文学部)関谷一彦 (関西学院大・法学部)棚橋 訓(慶應・文)早川聞多(日文研)古川誠(関大・文学部)山路龍天(同志社大・言語文化教育研究センター)山本和明(相愛女子短大・国文学科)

発足準備会
日時:1998年12月6日(土)午後2時 田中の報告レジュメあります。

 一九九九年度(第一週と第三週水曜日、第一週は読書会に当て、六月からL.Hunt編集の論文集Invention of Pornographyを読みます)

第一回例会
日時:4月21日(水)午後2時
発表者 大浦康介 ストリップティーズの修辞学
 第一回は和気藹々とした雰囲気で始まりましたが、女性の参加者がすくなかったのが残念、お遍路さんに出かけたり、ゼミとぶつかったり、パソコンが壊れたりと「不幸」重なったようです。nakednessとnudityとの対比をポルノ全般に適用できるかどうかが今後の課題となりそうです(田中)

第二回例会
日時:5月19日(水)午後2時
発表者 田中雅一 Money Shot の光と影
 男性の性活動の根幹(?)をなす勃起・射精、そして精液について性マニュアル書とポルノを中心に語ったものです。生殖について十分論じるべきではないか、もっと歴史的な変化を追うべきだ、という指摘が印象に残りました。今回は年齢的な偏りはありますが、男女比のほぼ半々で議論も活発、日仏会館でのビールの会も盛り上がりました。

第三回例会
日時:6月2日(水)午後2時
読書会 Lynn Hunt (ed.) The Invention of Pornography
序論・第一章〜第三章
 院生3名がこの書物の解題に取り組みました。わたしは前日からの歯痛で途中退散。Huntがどんな立場からポルノグラフィーをとらえようとしているのか、反ポルノ路線を行くフェミニズムの立場も垣間見えるが、そこに社会批判をみようとするリベラルな視点も捨てがたい、と考えているのか。

第四回例会
日時:6月16日(水)午後2時 
発表者 金文京 中国における性愛文学(近代以前)

第五回例会
日時:7月7日(水)午後2時 
発表者 Dr. Dixon Wong (ゲスト・スピーカー、Hong Kong University)
Japanese Pornographic Culture in Japan.
 日本民族学会で報告された王向華先生をあらためてお迎えしての講演会です。いろいろとハプニングのあった講演会でしたが、およそ50名の参加者があり、その後の懇親会も盛況でした。討議の続きは12月に香港でなされる予定です。

第六回例会 スタディー・ツアー 南大阪・リバティ大阪
日時:7月17日(土)午後2時JR葦原橋集合
 初めてのスタディー・ツアー、13名のうち4名がゲスト、また女性は一人でしたが盛り上がりました。お忙しい中案内をしてくれた原田敬一先生(佛教大学)、高木先生(人文研)に感謝します。  

第七回例会 
日時:7月21日(水)午後2時
発表者 山本和明 江戸時代における性愛表現
 春画になにを認めるのか?をテーマに活発な議論がなされました。ポルノでもなく、エロチカでもなく・・・という説は刺激的でした。図版もよかった。

夏休み

第八回例会
日時:9月22日(水)午後2時
発表者:藤本純子(阪大院、文学研究科博士後期課程)やおいとセクシュアリティー:女性が描く男性同性愛 
 会議のため途中で退席、議論に参加できず残念でした。  

第九回例会
日時:10月6日(水)午後2時
発表者:古川誠 「同性愛」の誕生
 前回に引き続き同性愛のお話でした。男色から同性愛への展開に鶏姦罪の中国起源や、女子学生同性愛の発見、またgender structuredとage structuredという区別など細かいエピソードもふくめて活発な議論が続きました。

第一〇回例会
日時:10月20日(水)午後2時
発表者:圓田浩二(関西学院大院、社会学部博士後期課程)援助交際における性の商品化の様相:インタビュー調査の事例から
 私(田中)は国際シンポ出席のため参加できませんでした。

第11回例会
日時:11月17日(水)午後2時
発表者:棚橋訓 <52ページの宇宙>−「裏本」史に関する基礎的研究(1)
 私(田中)は海外出張で参加できませんでした。

第12回例会
日時:12月1日(水)午後2時
発表者:赤川学(ゲスト・スピーカー、岡山大学文学部)『セクシュアリティの歴史社会学』を書き終えて
 たいへん刺激的な本を最近まとめられた赤川さんの登場です。夜遅くまで議論が続きました。

第13回例会
日時:12月15日(水)午後2時
報告者 大浦・田中 「香港レポート」12月10日から12日までの3日間に香港で開催されたワークショップJapan in Hong Kong/HongKong in Japanについての参加報告です。 

冬休み、一月もお休みです。

第14回例会
日時:2月2日(水)午後2時 
発表者:小野原教子(京大院、人間環境学研究科後期課程)服か身体かーーヴィヴィアン・ウェストウッドの方法
 知られざるファッション・ショーのコードと、それを暴くウェストウッドのコード破りのファッション・ショー。学ぶことの多かった報告でした。ビデオ上映あり。

第15回例会
日時:2月16日(水)午後2時 川村清志(学術振興会特別研究員) ネットの中のフェティシズム
 川村氏が探索したフェチ系サイトの分析です。なぜフェチの話はこうも盛り上がるのでしょうか。

第16回例会
日時:3月1日(水)午後2時 渡辺綾香(総研大院) 女給物語の文法――林芙美子『放浪記』をめぐって
 わたしは国際シンポのためにお休みでした。

第17回例会
日時:3月15日(水)午後2時 北原みのり(ゲスト・スピーカー)
「フリートーク」(日本とオーストラリアの性の現場から)
 オーストラリアと日本とのポルノ規制をはじめ、北原さんが取り組んでいるさまざまな活動を紹介していただきました。わたしはビデ倫の話が面白かった。セックスと暴力との関係も盛り上がりました。バタイユってなぜこうも男性を惹きつけるのか、というところに話が移りつつ、夜もまた白熱した議論が続きました。

第18回
日時:4月19日(水)午後2時 北原恵(東大院)精子の表象ーー男性アイデンティティの構築と<危機>
 『アート・アクティヴィズム』二巻の著者で知られる北原さんの登場です。精子がテーマでしたが、わたしは不妊症の男性用マニュアルが興味深かった。卵子と精子の次元でも力強い挿入が問題なのですから男は救われない。

第19回
日時:5月17日(水)午後2時 関谷一彦 エロティシズムとは何か
 ストレートな問題設定に真正面から取り組んだ報告でした。澁澤龍彦の「改心」、バタイユの評価、男中心のエロティシズム論など、議論はつきませんでした。

第20回
日時:6月7日(水)午後2時 小山俊輔 表象と享楽ーーラカンからポルノグラフィーを考える
 都合で残念ながら途中リタイヤ。

第21回
日時:7月5日(水)Brian McVeigh(ゲスト・スピーカー、東洋学院) Sexualized ‘Cuteness’ in Japanese Popular Culture
 「かわいさ」をキーワードに現代日本のジェンダーとセクシュアリティの世界に鋭く切り込む、今もっとも注目されている人類学者の登場です。藤本さんのヘビーな質問から始まった討論が延々と続きました。セクシュアリティから少しずれますが、欧米では権威とかわいさは対立しているため、日本の警官や自衛隊が使うマスコットが奇妙に思われる、という言葉が印象的。しかし、翌日の新聞にイギリスの警官もポケモンカードに似せた個人カードを作って、声をかけてくれた子どもに配る、という記事。つまりかわいさは権威がそうでない人にも近づきやすく見られるためのサインといえる。

夏休み

第22回
日時: 10月18日 (水) 河田 学(京大院、人間・環境学研究科博士後期課程)フィクションとしてのポルノグラフィー
 インターネットを題材に、分類の原理について話が盛り上がりました。肝心のフィクションをめぐる議論については(私には)やや難しかった。

第23回
日時: 11月1日 (水)小野原 教子(京大院、人間・環境学研究科博士後期課程) 女子レスラーのヴィジュアルパフォーマンスについてー
コスチュームを中心に
 今回の発表は、女子プロレスの試合(ヴィデオ映像)を見ていただきながら、女子プロレスを見る視線について、考えていきたいと思っております。・・・わたしは途中で退席しなければなりませんでしたが、ストリップ、ファッションショー、プロレスとその視線はユニークです。

第24回
日時:11月15日(水) 大浦康介 ポルノグラフィーを論じるための八つの問題提起ーこれまでの議論から

第25回
日時: 12月6日(水)田中 雅一 国家に抗する性の博物館ー秘宝館調査中間報告
 過去10年にわたって調査してきた日本各地の博物館を見えないものへの境界として位置づけ、その境界の変化を日本人の性意識の変化、性をめぐる社会観の変化と関係づけて論じました。

第26回
日時: 12月 20日 (水)藤本純子(阪大院、文学研究科博士後期課程)離脱するエロス--「進化」する性、SMボーイズ・ラブをめぐって
 やおいの新手であるSMやおいに焦点を当てた報告でした。当日は大浦家で忘年会。私は風邪で欠席。

第27回
日時: 1月 17日(水) 東郷俊宏啼くのか!啼かないのか!ナオミの涙のために! SとMの間を彷徨う言葉Part1
 SMポルノの系譜を丁寧にたどる報告でした。長かったがおもしろかった。まだ続きがあるようです。

第28回
日時: 2月 7日(水)山本和明 幻想の浪(よがり)声

第29回
2月24日(土)  藤本由香里(ゲスト)フリー・トーク

第30回
3月21日(水)  中野美代子(ゲスト)中国春画における空間と肉体

第31回
4月4日(水)  リチャード・レインRichard LANE(ゲスト)春画とポルノの差
 ご高齢(1926年生まれ)のために時間が短く、話が中途半端で終わったように思いましたが、ポルノに対する根強い偏見が垣間見えてためになりました。

第32回
6月6日(水) 北垣徹 「地獄」アンフェールのポルノグラフィー--フランス第三共和制期における検閲の問題
 フランスから久しぶりに帰国された北垣氏の報告です。この研究会ではあまり論じられてこなかったポルノグラフィーを取り巻く外的環境を視野に入れた議論でした。

第33回
6月20日(水) 斎藤光(ゲスト・スピーカー、精華大学教授)「変態性欲」の変遷・変容・拡散 
 斎藤先生お得意のクラフト=エビングの書物とそれが日本に及ぼした影響、さらに変態がHからえっちへと変貌する過程を分析。

成果公刊のための論文執筆のため一時休会となります。次回からは原稿をもとに報告していただきます。

第34回
10月3日(水)金 文京『童婉争奇』をめぐって──16世紀中国のポルノ文学

第35回
10月17日(水)山本和明 幻想の浪声(よがりごえ)
 セックスの時の声の変遷とジェンダーの変化とが絶妙な語り口で語られていました。

第36回
11月7日(水)藤本 純子 女が男×男を愛するとき──女性が読む男性同性愛物語への一考察
 いま最も注目されるやおいボーイズ・ラブ研究者の最新稿。すこし元気がなくなっているのが気になりますが、なんとかなるでしょう。

第37回
11月21日(水) 小山 俊輔 AV論 バルトの概念に依拠して日本のAVを論じています。モザイクのあるAVの固有性をテキストとして論じているところに新鮮さを感じました。当日は欠席。

第38回
12月5日 (水)圓田 浩二 「現代日本の性風俗:ヌクから癒しへ」ポスト宮台時代の援助交際を論じているかれの処女作『誰が誰に何を売るのか:援助交際に見る性・愛・コミュニケーション』(関西学院大出版会)が好評です。朝日新聞にも取り上げられていました。ヤルからヌクへ、さらに癒しへと風俗を需要する側の変化を辿っています。

12月19日(水)河田学 「ポルノグラフィーとは何か:ポルノグラフィーにおける虚構と現実について」添付の写真もさることながらなかなかの大作という印象を受けました。しかし、ビデオは写真に勝ると言うこと?

1月30日(水)小野原教子「ポルノじゃだめなの?ファッション研究者による和製女子プロレスへの提言」なかなか難しい。広田さくらのパフォ−マンスが気になります。これは一種のドラァグか?

2月20日(水)川村清志「ネットの中のフェティシズム 端末化する身体と欲望」これも大作でした。

3月6日(水)関谷一彦「ポルノグラフィーとエロティシズム」著者のエロティシズムへのこだわりがよくわかる論文でした。

制度上はこれで最終回ですが、報告論文集に向けてあと数回の会合を持ちます。みなさまごくろうさまでした。もうすこしです。

2003年1月11日(土)大浦康介「扇情のレトリック/猥褻のロジック」

文責田中


[田中のホームページへ]

[人文研のホームページへ]