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人文科学研究所所報「人文」第四六号　1999年11月18日発行

（資料紹介）小島祐馬旧蔵「対支文化事業」関係文書

高知大学附属図書館小島文庫所蔵「対支文化事業」関係文書【甲】

一、支那ニ於ケル文化施設ハ両国間ノ直接利益ヲ全ク顧慮セザルコト
　　〈此ノ事業ニヨリテ〉支那ノ排日的感情ヲ除去スル等ノ目的ヲ基礎トシテ此事業ヲ創メザルコト

一、此事業ハ支那数千年来ノ文化ヲ研究シ保存シ世界ヘ紹介スルヲ以テ目的トス

一、此事業ノ重ナルモノハ精神科学ニ於テハ支那ノ儒学，宗教（仏道），歴史，地理，文学，言語，芸術，土俗，遺物等，自然科学ニ於テハ天文，動，植，鉱物，薬物，地質，気象等ノ研究ヲナスコト

一、古来ノ経籍ニ就キ権威アル定本ヲ作ルコト

一、日支ニ現存スル古典ノ蒐集及び出板

一、字書索引等凡ソ支那ノ学術研究上極メテ必要ニシテ従来閑却サレタル編纂出板ヲナシ両国人ヲシテ支那研究ノ便宜ヲ与フルコト

一、近時英独仏米［校注:Stein Gru¨ndweder 〔sic〕 Lecoq etc Pelliot Rockfeller Institute との脇書きあり］諸国ガ支那ニ於テナセル例ニ倣ヒ時々探険隊ヲ支那内地及び塞外ヘ派遣シ千歳埋没セル前〈―〉掲研究之材料ノ蒐集ヲナスコト

　此事業ハ我国ノ各種専門家ヲ集メテ之ヲナサシムルハ言フヲ待タザレドモ，同時ニ支那ノ学者ヲ聘シ十分優待ヲナシ此事業ノ完成ヲ襄助セシムベ

　支那ノ学者ヲ聘シ優遇ヲナスコトハ此事業其物ニ必要〈スル為〉ナルニヨル。〈学者〉彼等ノ歓心ヲ買ヒヨリテ排日的感情ヲ融和セムトイフ如キ陋劣ナル動機ヲ交ヘザルコト

　康煕乾隆諸帝ガ自ラ学ヲ好ミタル結果清朝ニ学者輩出シ其業蹟ハ〈今日マデ〉支那ノ学術上不朽ノモノタリ世或ハ二帝ノ学者ヲ優待セシハ漢人懐柔ノ策ニ出タレトイヘド此レハ全ク二帝ノ人トナリヲ知ラザル言ナリ。此挙ヲナスニ当リ我国ノ態度ハ公明正大何等ノ私心ナク康乾二帝ノ心ヲ以テ心トナスコト

　支那〈ノ〉ニ於ケル文化施設事業ニツキテハ世或ハ我国ニ於ケル留学生ノ学資補〈助〉給，会館ノ設立，支那ニ於ケル学校病院ノ建設〈ナド〉等ヲ提倡スルモノアリ此レモ〈極メテ〉必要タルヲ失ハザレドモ此等ノ事業ニヨリ英米ト競争スルコトハ極メテ不利ナリソレヨリモ彼ノ短所ニテ我ノ長所タル前掲ノ事業ニ主力ヲ集中スルコト利益ナリ荘子ニ無用ノ用トイフ事アリ当局者此点ニ着眼翫味サレムコトヲ望ム
高知大学附属図書館小島文庫所蔵「対支文化事業」関係文書　 甲
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