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報告書 | 紀要 | 所報 | (第四五号 1999) |
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前川和也 | 冨谷至 | 勝村哲也 | 木島史雄 | 横山俊夫 | 森本淳生 |
人文科学研究所所報「人文」第四五号 1999年3月31日発行 | |
夏期講座(1998年度) |
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中国古典籍のブックデザイン |
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木島 史雄 |
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ここでは書物を,その使い方から,読む書物/調べる書物/拜む書物の三つにわけて考えてみます。「読む書物」とは,小説などがそれで,作者の指定した流れに沿って読む事を要請し,モノとしてできるだけ流れを妨げないようにデザインされています。「調べる書物」とは,辞書,電話帳,時刻表などがそれで,使う者が一部だけを取り出して利用する書物であり,求める文字を探し出しやすいように工夫がされています。「拜む書物」とは,お経,おふだなどがそれで,内容とは関係なく,それを書き写したり,所持していたり,声に出して読んだりすることに価値があるとされる書物です。 つぎに中国の文献学の「書」と「本」の区別にも触れておきます。「書」とは,『高野聖』『歌行燈』などの,著作物の種類のことです。それに対し「本」とは,書の現実態としての版やヴァリアントのことで,自筆原稿本/鏡花全集本などといった区別がそれに当たります。ところでこの「本」の違いは,その本が当初想定していた使われ方を反映しているということができます。たとえば,携帯に便利な文庫本は,戸外で読むことをも想定しているでしょうし,大きな活字の本は,老眼鏡世代を読者に想定しているというぐあいです。そしてそれが同書異本の場合には,書ではなく,本ごとの,想定されている読書環境の違いがきわめてはっきりと浮かび上がってくるというわけです。 例として,古典の本文と一次注釈を対象として著わされた,六世紀の二次注釈書『経典釈文』を取りあげてみましょう。この「書」については,篇章構成上の特色として,凡例の存在があげられます。文字表記の点では,朱墨のつかいわけ(本文=墨,一次注釈=朱),摘字注釈(注釈の対象となった文字だけを掲出する),篇章名標出(章の名前を見易いところに掲げる)といったことがあげられます。これらの特色から,本文と注釈とが,別々であったこと,この書物が「読む」ものというよりも,「調べる」ものという性質をつよく持っていたことが判ってきます。また「本」のレベルでいえば,この書には多くの本があり,その広がりから,『経典釈文』という書物の,時代による利用のされ方の変化を見て取ることもできます。書物の中身ではなく,器としての性格に目を向けてみることも,書物を考える際に,たいへん有用なことなのです。 |
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古代メソポタミアの粘土板 | 前川 和也 |
古代中国の木簡 ――紙より優れた書写材料―― |
冨谷 至 |
『百万塔陀羅尼』の語るところ ――再説 歴史家の視角と作家の視点―― |
勝村 哲也 |
日用百科の使われかた ――十九世紀の日本―― |
横山 俊夫 |
印刷文化と手稿マニュスクリ ――ヴァレリーにおける〈モノとしての書物〉―― |
森本 淳生 |