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人文科学研究所所報「人文」第四七号 2000年3月31日発行 | |
所のうち・そと |
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新文房四宝の悩みと楽しみ |
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岩井 茂樹 |
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文房四宝とまではいかなくとも,かつては筆記具や紙へのこだわり,楽しみもあった。ところが今や,フロッピーや電子メイルで入稿すべし,の時代。キーボード,CPU,ディスプレイ,ソフトウェアの新文房四宝が,筆記具さえ駆逐する勢いである。この時勢に,わが『東方学報』をはじめ,守旧派雑誌は旧漢字なるものを要求する。一方,普通の社会では,旧漢字はお断り。悩ましいことに,われわれの伝達手段であるJIS漢字コードは,新旧の漢字や俗字を併存させている。しかも中途半端に。資料や草稿を入力する段階では,これらの別にかまう遑はないので,おのずと新旧俗が混在する。 十数年前,パスカルというしゃれた名前の言語をおぼえた私は,テキストファイル中の新旧漢字のすべてを一気に置換統一するソフトを作った。sed などスクリプト言語でも,同様の処理は簡単に書けるが,ささやかな工夫をこらした自家製プログラムの方が速かった。やがてウィンドウズに移行すると,新旧の置換統一のために Dos のプログラムを起動し,ファイルを処理させるのは面倒である。四年ほど前,プログラム機能をもつエディタを買い,C言語風のマクロ言語をかじってプログラムを書き直した。かくて,文章を書くエディタの環境のなかで,範囲を指定して新旧漢字を簡単に統一できるようになった。 原稿や資料の入力はエディタが快適だが,注をつけ体裁を整える段になるとワープロが便利である。ワープロでの作業にとりかかる前に,新旧漢字の置換統一を済ませておいても,さらに文章を加えることが多い。新旧統一機能はワープロにも欲しい。しかし,このワープロのマクロ言語は,オブジェクト指向という新種であるうえに,マニュアルが附属しない。別に購入すると高価である。こうして尻込みをしていたのであるが,今年の正月,進展しない論文の気分転換にでもと,マニュアルなしでプログラムに取りかかった。 |
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処理対象として選択した範囲を Range という型のオブジェクト変数で受け,その Range オブジェクトの要素である個々の文字を走査して置換するという単純な設計である。ところが,走査すべき文字を受ける変数の型を間違えたようだ。Char や WChar(文字型)もだめ,String(文字列)もだめ,Word(2バイト汎用型)もだめ,どの型の変数をつかっても文字を受け取れず,エラーになる。万策尽きたところで,解説の画面に「文字は Range オブジェクトです」という一句を発見した。複数の文字や文章の段落からなる選択範囲はすでに Range という型のオブジェクトである。さらに,その中の要素である個々の文字も Range という型のオブジェクトだという。仰天した。Range という型が二重に定義され,しかも入れ子になるとは。パスカルやCなどの構造化言語では許されない。ところが,ここでは文字を受ける変数を Range オブジェクトとして宣言すると,エラーは解消しプログラムは動いた。 オブジェクト指向とはこういうものか。あちこち頭をぶつけながら体験し書いてみないと,事がらの理解は難しい。新文房四宝も,歴史の研究もこの点では同じかもしれない。 |
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古本屋と私 | 落合 弘樹 |
ピュフとギャプ | 北垣 徹 |
情報の行方 | 高嶋 航 |
もうひとつのシュタイン肖像画 | 瀧井 一博 |
一・一七が今伝えるもの | 竹沢 泰子 |
親碗を叩く | 岡本 稲丸 |