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報告書 紀要 所報 (第四七号 2000)
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岩井茂樹 落合弘樹 北垣徹 高嶋航 瀧井一博 竹沢泰子 岡本稲丸


人文科学研究所所報「人文」第四七号 2000年3月31日発行

所のうち・そと


古本屋と私

落合 弘樹    

 私は入所した年の開所記念パーティーで新人挨拶を行った際,「古本屋さんで御名前を存じあげている高名な方々を前にし……」などと口走り,名誉所員の方々にとんだ不調法を働いた。宴たけなわで誰も聞いていないだろうと思っていたが,後の祭りだった。一瞬の沈黙ののち会場じゅうから笑われた。普通なら舌禍事件として一巻の終わりだったはずだ。寛容にも今日まで禄を食むことが許されているが,開所記念日を迎えると,こんなことを言わないようにと“新人教育”をする人が現れるので,いつも冷や汗を流す。

 研究者と古書店は切っても切れない関係にある。私は東京に住んでいた当時,神田神保町の古書店街に毎週通った。一日歩き回ると必ず何らかの発見はある。自然に,ある程度は古書の値段がわかるようになる。そんな次第で,「あの先生の御本は随分と高かったな」などと考えているうち,冒頭の無礼な発言をしてしまった。

 京都には神田のようなまとまった古書店街がないので,通りがけに古書店に立ち寄ることが多いが,ひとたび顔を覚えていただければ東京より親切な店主が多い。土地柄から和本など珍しい書籍も豊富で,著名な学者の旧蔵書が店頭に並ぶこともある。先日,ある史料集を格安で購入した。赤鉛筆の書き込みが入っているので値引きされていたが,私の研究主題の先行研究者で,人文研助手の大先輩でもあった方の遺品だった。残念ながら生前にお目にかかることができなかったが,書き込みからは多くのことを学ばせていただいている。


新文房四宝の悩みと楽しみ 岩井 茂樹
ピュフとギャプ 北垣  徹
情報の行方 高嶋  航
もうひとつのシュタイン肖像画 瀧井 一博
一・一七が今伝えるもの 竹沢 泰子
親碗を叩く 岡本 稲丸