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報告書 | 紀要 | 所報 | (第四五号 1999) |
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人文科学研究所所報「人文」第四五号 1999年3月31日発行 | |
所のうち・そと |
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断章 ――ある問答から |
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冨谷 至 |
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ストックホルムの国立民族学博物館に未発表の五枚の紙文書がある。一九三〇年代に西北科学考査団が楼蘭にて入手したとされる三〜五世紀の楼蘭古紙とおぼしきものだが,果たしてそれが本物かどうか分からない。紙の科学的分析ということで,東京国立文化財研究所,コペンハーゲン国立博物館の紙の専門家を訪ねて,東奔西走している。以下は,ある時の会話である。
楼蘭古紙の二〇世紀初においての複製は可能なのでしょうか? ――麻紙の伝統的製法による限り当然同じ紙ができます。今日でも,麻紙製造の古い技術を残している村が中国各地に存在し,そこで作られる紙は三,四世紀の楼蘭の古紙と大きな違いはありません。そもそも,紙の製法はそれほど難しいものではなく,いたって単純です。原料・水・すのこの材料(葦・キュウキュウ草)・臼さえあれば,簡単にできるのですから。 紙を科学的に分析する事で,その年代を測定できるのでしょうか? ――顕微鏡写真で判明するのは,材質の相違だけです。楮・樹皮・麻などの区別は当然できるますが,材質が同一のもので,それが何世紀のもの,どれだけ古いものなのかということを科学的に実証できる有効的方法はありません。 紙の古さで分かるではないですか。 ――「古び」ですね。その古びの科学的測定は難しいのです。まして,人工的に古びが細工されている場合には。人工的に古びが作られ,それが半世紀も経ると,もはや不可能と言ってもよいでしょう。 つまり紙の科学的分析は真贋の有効的識別方法にはならないという事なのですか? ――現段階では,そうだといわざるを得ません。私も何か有効的方法がないかと考えてはいるのですが。 墨の分析での判別はどうでしょうか? ――墨と紙を完全に分離すること,資料としてある程度の量を検出できること,この条件を満足するならば,不可能ではありません。つまり,これはC測定によるものだが,C測定法は紙だけに対してもできます。四センチ四方の紙,四枚を切り取り,それを燃やせば年代測定はできるのですが,貴重な資料を台無しにしてもよいのですか? |
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