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報告書 紀要 所報 (第四五号 1999)
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人文科学研究所所報「人文」第四五号 1999年3月31日発行

所のうち・そと


中世学会議

小南 一郎    

 通算すれば,中国での滞在は,二年以上の日月になるのであるが,アメリカへ行くのは,今回が初めてであった。飛行機を乗り継いで到着したのは,ミシガン湖に近いカラマズーという町で,カラマズーの原義は,原住民の言葉で,煙が見えるところ,すなわち宿営地の意味だとのことである。大学のほかにはなにもないようなその地で開かれた中世学会議に出席し,中国中世都市の性格についての論文を一つ発表した。

 会議は五百余のセッションから成っていたが,当然ながらヨーロッパの中世に関わるものが大多数を占め,おまけのように,中国の中世に関わるセッションが二つ,日本に関するセッションが一つ付いていた。中国に関係する発表のない日には,西欧中世の文学や民俗に関わるセッションの発表を聴いた。西欧についての基礎知識を欠いており,十分には理解できなかったが,問題意識や方法論には参考になる点が多かった。

 この会議には,正式の開会式も閉幕式もなく,運営は各セッションの組織者にまかされ,セッションごとにそれぞれの分野の専門家が集まって,実質的な討論がなされていた。集まっているのは,いわば身内どうしで,質問も,発表はおまえの持論を敷延したものであるが,基本的な視点に問題があるといったやり取りがなされていた。そうした中に,風呂敷包みに資料を入れた,一人の見知らぬ東洋人がいて,みんなが笑った時にも笑わず(英語力不足で笑えず),発表が終わると,黙って会場を出てゆくのであった。いかなる人物だと思われたのか,いささか気になるところである。


断章 ――ある問答から 冨谷  至
二度目の台湾訪問で感じたこと 籠谷 直人
カーラント・コレクションヘの旅 藤井 正人
延安の三月 岡村 秀典
雨うけと変な器 織田  陽
〈人文科学研究協会 研究奨励賞〉
中江丑吉遺品を守ってくれた中国女性のこと
阪谷 芳直